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最高裁判所第2小法廷判決 平成11年4月16日(判例タイムズ1017号87頁)

【判決要旨】
代表者が請負代金の受領権限を有し、代表者が受領した代金は速やかに構成員に分配する旨の協定のもとで建築工事をすることを目的とする共同企業体が結成され、注文主が、共同企業体の代表者との間で締結した請負契約に基づき、代表者名義の預金口座に請負代金を振り込んだなど原判決挙示の事実関係のもとにおいては、右代金は、代表者に帰属し、共同企業体の財産にはならない。
【事案】
1 X会社とA会社は、B県から大学の建築工事を請け負うため、出資比率を各二分の一として共同企業体を結成した。その際、XとAは、共同企業体の代表者をA(C支店長)とすること、代表者が請負代金の受領と共同企業体に属する財産の管理権限を有すること、代表者名義の銀行口座(別口口座)によって取引すること、代表者が請負代金を受領したときは、速やかに構成員に分配することなどを協定した。代表者は、Bとの間で、本件請負契約を締結した。Bが請負工事残代金を別口口座に振り込んだところ、Aは、翌日右口座から右代金を払い戻してAの口座に振替入金した。しかし、その後、Aについて会社更生手続が開始し、YがAの更生管財人に選任されたが、右代金は、Xに分配されなかった。
そこで、Xは、右代金の半額について、(1)取戻権(会社更生法六二条)または賠償的取戻権(同法六六条)、(2)共益債権(同法二〇八条六号、八号)を有すると主張し、Yに対し、右金員の支払を求めた。
一審、原審とも、本件代金は、別口口座に振り込まれたことにより、代表者に帰属し、その半額がXに帰属したとか、全額が企業共同体の財産になったとはいえず、Xは本件協定に基づく分配金請求権を有するにとどまるとして、Xの請求を棄却した。
これに対し、Xは、原審の右判断には法令違反があるなどと主張して、上告したが、上告審(本判決)も、原審の判断は正当として是認することができるとして、上告を棄却した。